世界最大級の野牛
家畜牛の祖先であるオーロックスは既に絶滅しているという記事を以前に書きました。今回は野牛としては世界最大級といわれているガウルという牛について書きたいと思います。ガウルはインドからマレー半島にかけて現存する野生牛です。体長は2.5~3m、体重は700~1000kg、大きな雄の個体だと体高2.2m、体重1,500kgもあるという人もいます。ガウルの雌や子牛の体はこげ茶色で、雄は成長すると黒色になります。前後の足は白いソックスをはいているような特徴があり、肩から背中にかけて筋骨隆々でたくましく盛り上がっています。また、雄も雌も大きな頭に三日月のような立派な角が生えています。
生息場所は標高1500mくらいの高地にある森林地帯などで、通常は数頭から20頭ほどの群れで生活しているようです。ただし、成熟した雄は繁殖以外では、単独行動をしたり、雄同士で群れを作るそうです。せっかく仲良しでも繁殖期の雌争奪戦はすごそうですね汗。主食は、森に住んでいるので草や木の葉を食べます。タケノコも好んで食べるというので、我が家の愛牛たちと同じです笑。
ガウルの繁殖
繁殖シーズンには雄牛は低い声で唸り続けて「歌う?」ようです笑。我が家の種牛イチロー君も発情しているとヴォーヴオーと鳴くことがあります。きっと同じですね。妊娠期間は270~280日ですから、ホルスタインの280日とほぼ一緒です。繁殖シーズンはミャンマーでは周年繁殖、インドでは8~9月にお産します。授乳期間は約9ヶ月だそうですが、これは参考になりますね。乳牛では生後すぐに母子は分けられてしまいますが、人工的に2~3ヶ月哺乳します。野生の牛は本来どのくらいお母さんのおっぱいを飲むのか気になっていたのでとても勉強になりました。
群れを守るために団結してトラとも闘う
さて、ガウルには外敵が多いそうです。主に襲われるのは子牛で、成獣となった大人のガウルが襲われることはほとんどありません。襲うほうもかなりのリスクがあるので、納得ですね。成獣したガウルはヒョウやオオカミでは太刀打ちできないほど強く、また外敵に襲われたときは大人の牛が子牛を守るように取り囲んで、敵を追い払うそうです。ただし、最大の天敵であるトラはそう簡単にはいきません。ガウルの子は生後1年以内に半数以上が死んでしまうそうですが、その主な原因はトラに捕食されてしまうからです。成獣であっても深手を負わされたり、時には殺されてしまいます。もちろんトラのほうにもリスクがあって、逆に殺されてしまうこともあります。
先日、雄だけでなく雌も角があるのはなぜですか?という質問メッセージを頂きました。角のある品種だからという回答をしようかと思いましたが、少し考えてみました。雄は単独行動や雄だけで群れをつくったりします。また、繁殖期であっても雄だけで全ての雌牛や子牛を守ることはできません。雌であっても自らと子を守るためには外敵と戦わなければならない。そのために角があるのではないでしょうか。
余談ですが、普段人を襲うことのないガウルが人を襲うときがあります。それはトラに襲われて深手を負った場合です。警戒心が強くなって、人も襲ってしまうようですね。これはホルスタインでも一緒なのですが、追い詰められた雄牛は非常に危険です。怪我をさせなくても、精神的に圧迫してしまうと攻撃性を剥き出しにしてくるので注意が必要です。
日本でガウルが見られる動物園がある!?
私も最近まで知らなかったのですが、本記事を書くためにいろいろと調べていたら、なんと日本でガウルを見ることができるようです。横浜市立金沢動物園というところに雌のガウルが4頭います。残念ながら雄はいないみたいですが、インドの森林地帯までいかなくても世界最大級の野牛が見られるのでぜひ行きたいですね。絶滅危惧種のガウル
ガウルは絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。原因としては、トラなどの天敵に襲われること、角やお肉目当てのハンターによる乱獲、そして家畜の牛の放牧によるエサの減少や病気が移されることなどが考えられています。ガウルが絶滅しそうになっている影響で、ガウルをエサとしているトラも絶滅危惧種に指定されています。1つの種が滅んでしまうとその周りの生態系にも大きな影響があるんですよね。自然淘汰であればやむおえないことかもしれませんが、人為的な部分もかなりありそうなのでしっかりと問題を意識したいですね。